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好奇心の発露


by shes_inn
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ドラマ「火の魚」

たぶん2週間前くらいに、土曜日に大河の再放送かな、を見た後そのままにしていて、スタジオパークからこんにちは、みたいな番組に原田芳雄が出ていた。それが、標記のドラマの番宣だったわけだ。
原田芳雄は大好きな役者さんで、遠い昔、大学生の頃かに、週刊誌に息子さんを肩車しているグラビア写真が載っていて、切り抜いて大事にしていた。変わった女子大生だ。

で、そのドラマにとても興味を持ち、録画して見た。
素晴らしいドラマだった。因業な作家と若い編集者。テーマは、目の前にある「死」。
コントラストの強い、青い空と濃い緑、暗くて古い作家の家の中、公民館みたいなところで影絵芝居。子どもたちの反応。

「死」とうらはらに、「生」の証とも言える「恋」。
おき火のように、手をかざせば温まり、手をつけてしまえばやけどになる怖さは、「死」と隣り合わせの思いだろう。

若い女は、病院でパジャマ姿で背を丸め、視線を落として座っている。
それを上階から見つける手に大きな赤いバラの花束を持つ老作家。
しかし、下に降りてみると彼女はいない。

病院の外の庭で呆然と座る作家のもとへ、スーツに着替え、とはいえ白いニット帽をかぶる(たぶん、放射線照射で髪の毛が抜けているとかだろう)若い女。
「そんな花束を持っているから、病院中の女が色めき立っています」
いい台詞だなあ。
そこに立っている若い女は「編集者」としての女だ。
哀しいシーンだけど、うれしいシーンだ。来てくれた。大きな赤いバラの花束とともに。
「生」がそこにある。確かに、生きている。

島に戻る船の中、「死」への恐怖から、自分を離島に向かわせ、酒もタバコも我慢して因業に暮らす老作家は、青い空に向かって「タバコ吸いてー」と叫ぶのだ。

いい。いいドラマだ。

こういう大人のドラマの、大人の気持ちが染み入るようになったのも、自分が歳を取ったからだろう。歳を取るのも悪くない。
by shes_inn | 2010-04-01 01:14 | テレビ